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戦後を代表する小説家・故・池波正太郎氏は「大人がお金を使わない国は文化が衰退する」と言っていた。直木賞受賞作家の石田衣良氏は、池波氏のこの言葉に触発された訳ではないだろうが「大金を出さなくても、趣味にお金を回すのは楽しいこと」と書いている▼内閣府の発表では、6月の消費者動向は、現行の調査方法では26年振りの最低となった。平たく言えば、消費気分が極端に低迷しているのである。原因は、言わずと知れた「物価上昇」。昨今のような状況では、消費者としては守りの姿勢に転じるしかない。これは世界共通の傾向だ▼石田氏の趣味は「オーディオ」である。作家の仕事部屋と思えない程の、整理整頓された部屋は、まさにショールームの雰囲気。その中心を占めるのがオーディオセットである。しかし石田氏は「高ければ良いのではなく、私が最も重視するのはデザイン。少々音が悪くても、デザインが良ければ我慢します」▼つまり、趣味とは心の波長の要素が関係してくる。石田氏にとって音楽を聴くという生活スタイルは、部屋の環境、雰囲気が大いに作用しているのだろう。彼にとっての部屋は、仕事部屋であり趣味を活かす場。原稿を書き音を聴く気分になれることが大切なのである▼そして石田氏はこう言う「大人よ、少しは無駄遣いを楽しもう」と語る。無駄遣い≠ニいう言葉だけを聞けば、不遜(ふそん)に聞こえるかも知れないが、彼の言わんとするところは「人生を楽しむためには、趣味に少しお金を回す心の余裕を」と言うことであろう。「趣味に回すお金なんてない」のは現実だが、そんな中でも少し心をオープンにし、ささやかな楽しみを持つのも必要なのではないだろうか。