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デスク記事

2010/04/22

 上海に滞在したとき、早朝の広場の各所で大勢の人が太極拳に打ち込んでいる光景に出会った。円を描くそれらの動作は、陰陽変化の法則に叶ったものだという。見よう見まねで真似てみたが、ゆっくりした動きが体中の筋肉を使う、予想外にきついものだと知った▼若い人からお年寄りまで、みんな真剣な表情だ。日本的に言えばラジオ体操に当たるかも知れない。しかし正しい形にこだわり、何と言っても真剣度がまったく異なる。みんな精神を集中させ、その表情は厳しい。今やすっかり形が崩れてしまった日本のラジオ体操とは比較にならない▼列の前に立ち、正しい形を指導しているリーダーに「みなさん、健康つくりには熱心なんですね。それにしても、形に忠実なんですねえ」と聞くと、こんな返事が返ってきた。「形が崩れれば身体に何の効き目もなく、やっている意味がない。全身の筋肉だけでなく、内臓も鍛えることが出来るのです」▼そしてさらに「病気になっても、すぐ病院にかかることは難しい。お金もかかるし、病院もそう多くないですから。だから、病気にならない身体造りが必要なのです。太極拳は庶民の生活の知恵なんです」と汗をぬぐっていた▼病気になる前に自分の努力で健康体を保つ努力が、彼らの自己防衛策なのだ。マチの市場に行けば必ず多くの薬草売り場がある。いわゆる漢方薬で、その種類の多さに驚かされる。店の人に相談して、自分に合った薬草を買い求め、それを家庭薬にするのである▼身体を鍛え、自然の恵みで健康体造りを行う中国方式に、日本人は少しは学ぶ必要があるのではないか。体調を崩すとすぐ病院≠オか頭に浮かばない人の多いのも確かだ。自分の出来る健康法とは何か、普段から考えてみてはいかが。