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デスク記事

2010/04/28

 マレーシア経由でインドネシアに向かった。出発前の成田空港は閑散としていた。アイスランドの火山の噴火で、ヨーロッパ方面の便は数日に渡ってキャンセルが続いていたからだ。成田周辺のホテルはもちろん、旅館、民宿など、どこも超満員だったという▼ひと組の老夫婦と話を交わした。「何年振りかしらねえ、2人で旅行するなんて。もうこんな機会はないと思って、インドネシアのバリ島に変えたんです。便がとれて良かった」と笑顔で語ってくれた▼テキサスから来たという、陽気な中年の男は「日本の後ヨーロッパを回る計画だった。日本は1週間滞在の予定だったが、噴火のため4日も余分に東京に居たよ。でも、急きょインドネシアに変えた。払い戻しが利くかどうか分からないけど、今回の旅行は高くつく」と高笑いしていた▼地球を縦に移動する人と横に移動する人の運が、ひとつの自然現象で大きく分かれる。観光旅行が台無しになるのはまだ良しとしても、ビジネスなど死活問題の人も多いだろう。また、大げさでなく、これで人生が変わってしまう人もいることだろう▼人は、自然現象が静穏であることを前提に行動していることを、今回の大噴火で改めて知らされた。そして自然の突然の変化が、人の動きに割って入る。アイスランドは別名「火の国」と言われている。紋別から旅行した人に聞くと、その風景は、地球創造を思わせる荒涼としたものだと言う▼マレーシアに向かう飛行機の中で「ヨーロッパ方面でなくて良かったね」という会話が聞こえてきた。しかし先のことは分からないのが世の常。インドネシアで何かが起きれば、火山で足止めをくった人は「足止めされた事など大したことない」と言うだろう。