デスク記事
「銀座には、それまでのお客さんがパッタリ来なくなりました。昨年秋頃から、それが急に目立つようになり、今では、以前の賑わいがウソのような静かさ。店も随分なくなりまして、目の前の高級クラブも、呼び込みに懸命でしょ。経済不況の波は、一番始めに銀座に来るのです」・。▼銀座8丁目で和食の店を出している女将(おかみ)がそう教えてくれた。アメリカの証券会社リーマン・ブラザースが経営破綻した昨年9月。それ以前から客の動きが急変したという。顔の表情が厳しくなり、話す内容も、緊迫する仕事のことが多くなった。「もう来れなくなるから」と手を振って去ってゆく客の姿もあったという▼向かいにあるスマートなビル。一階は空間になっていて、高級外車が展示してある。昨年夏までは、ひとときを過ごした客がホステスさんに送られて出てきたが、今は客を呼び込むためのホステスさんが、道ばたに出ている。私が通っても、声をかけてはくれなかったが▼女将の話では、700件が消えていったという。それも、昨年秋から現在までの短い間の出来事である。「銀座は、不況の波が第一番に来る所ですから。その鋭い空気感を、私も感じてきました。そして、まだまだ、大きな波は続いています」と言う▼「空気を察した訳ではなかったんですが、それまでの店舗が広すぎたので、今の小さな店舗に引っ越していたの。それで助かったわ。料金も下げましたし、昼間は、ここが音楽レッスンの教室に変わります。若い方たちに教えているのです。私は18時間労働、矢張り疲れますよ。でも、好きな道ですし、皆さんも必死になって生きています。銀座で生きて行くため、それは当然のこと。頑張ります」と語っていた。