デスク記事
車にハネられたのか、道路に横たわり、命を失っているキツネを度々目にする。以前、小向の国道脇に4匹の親子ギツネが居た。車で通るとき、その姿を良く目にしたが、先ず親ギツネが相次いで車にハネられ、残された2匹の子ギツネは次第に痩せてゆき、やがて姿が見えなくなった▼随分前に読んだ、童話「ごんぎつね」が思い出される。親を亡くして一人ぼっちの「ごん」は、淋しさをまぎらわすため、辺りの村に出ていたずらばかりしていた。ある日、村の人が川でウナギをつかまえたのを見て、ビクの中の魚やウナギを全部川に逃がしてやった▼そのウナギは、その村人の母親の病気を治すため、栄養をつけさせるためだった。数日してごんは、葬式の列を見て、自分の犯したいたずらの重大さを知った。ごんは、いわし売りの車から数匹のいわしを盗み、それを村人の家の中に投げ込んだ▼森からクリや松たけを拾っては、村人の家に投げ入れた。そんな日々が続いたある日、クリを持って行ったごんは、その村人に見つかってしまった。村人は「ウナギを逃がしたお前が、またいたずらに来たな」と、鉄砲を持ち出し、ごんを撃ってしまった。入り口にクリが落ちているのを見て、その村人はクリを運んできたのがごんだと知り「お前だったのか」と涙を流した▼無惨な姿で車にハネられるキツネは数知れない。子どもの命を守るため、海岸に出てエサを探したり、塩を求めるのである。その途中に国道がある。生死を賭けての行動なのだ。人間の役にたつことはあまりないだろうが、キツネが生きられる自然があるのは、とても大切なことと思う。「ごん」のように、人間の役にたとうとしているキツネも、もしかしたら居るかも知れない。