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「初心にかえる」という言葉がある。志した時の謙虚さを忘れてはならない≠ニいう意味。それを、車を運転する全ての人が、心に留めたい。免許を取得しようと自動車学校に通った時、運転の仕方や交通法規などを、実に素直な気持ちで学んだはず。それが免許を取得して時間が経つと、いつの間にか自分本位の運転の仕方になっている▼雪どけのシーズンに入った。車道に水がたまっているのに、スピードを落とさないまま汚れた水をハネ上げて、歩行者にかけ、そのまま走り去る。横断歩道の白いラインが見えているのに速度を落とさず、歩行者は路端で待つことになる。これからは新一年生が登下校する時期。横断歩道は歩行者優先≠ニ習っている子ども達が心配である▼免許を取得した当時の自分を思い出して欲しい。教えられたことに従って慎重な運転をしたはずだ。試験問題にも、歩行者保護の大切さを問うものが多く、それに答えてきたはずだ。だが、免許を取得して月日が経つと、一番基本的な運転のマナーはどこかへ行ってしまう▼そんな運転者よ、何を勘違いしているのだ。道路は、安全運転する運転者のみに提供されている公共の施設だ。物理的に圧倒的に強者である自動車は、歩行者、特に高齢者、子ども達など、力の弱い人達への思いやりは絶対に必要だ。車が「主」でないことを知り、もっと謙虚な運転を心がけよう▼人間の能力を遙かに超える乗り物は、それ故に便利さと危険が同居している。人知を越えた乗り物であることを忘れたとき、危険は自分にも、周辺にも及んでくる。重大な事故を起こした人は必ずこう思うそうだ。「ああ、免許を取らなければ良かった」と。遅いけれど、その時、ようやく初心にかえるのだ。