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野球に関心がない人でも熱狂したWBC(野球世界一決定戦)で、日本チームは見事に優勝し、日本国民を元気づけてくれた。しかし「侍ジャパン」の選手達に、侍であることの重圧がいかに凄まじいものであったか、私達は今知らされている▼あのイチローでさえ、胃潰瘍でメジャー入り後初の故障者リストに入り。公式戦を8試合休む結果となった。しかしさすがイチロー。15日から出場し、いきなり満塁ホームラン。日米通算安打30085本の日本タイ記録を達成した。さらに未踏の記録に向かうことになり、ファンをホッとさせた▼松坂選手も調子が出ない。所属するレッドソックスの首脳陣は「やはりWBCの影響で、肩に疲労がたまっている。球威もキレもない」と、本来の出来でないことを認めている。セリーグの本塁打王・村田選手は、大会で右太ももの肉離れを起こし、まだ二軍で調整中。その他の多くの選手もWBC疲れからか、本来の調子が戻ってこない▼プロ野球の選手にとって本番≠ヘペナントレース。その前に行われるWBCは国の名誉をかけた戦いではあるが、ある種の祭典とも言える。「侍ジャパン」の選手は、祭典で体調を崩し、大事な本番に間に合わなかった・とも言える▼楽しいニュースが少ない昨今、WBCの優勝は国民の心に感動と歓喜を与えてくれた。選手達の高いスポーツマン精神と、礼儀正しい魂(たましい)をかけた戦い振りに、日本人の誇りを感じさせてくれた。その選手達は今、栄誉と引き替えに思いがけない代償を払っている。それなら、WBCを見て楽しみ、喜びをもらった私達は、今は解散した侍ジャパンの選手一人一人に対し、早い復調と活躍を、せめて祈ってあげたいものだ。それも礼儀ではないだろうか。