デスク記事
「市長」とは、その市、地域を代表するリーダーで、信頼篤(あつ)い高潔な人物。殆どの人がそんなイメージを持つだろう。ある意味で、人物評価については国会議員より高いかも知れない。それだけ地域の人達に馴染みがあり、人格なども良く知られているからだ。しかも選挙戦を通じて、住民の支持を受けて市長の座に就くのである。「悪」のイメージからはほど遠い▼そんな既存のイメージが狂い始めた。公共事業に便宜をはかり、見返りに百万円を受け取った容疑で、鶴岡・千葉市長が逮捕された。旧自治省出身で大臣官房審議官も経験した官僚キャリアでもある。市長は2期目で、最近ではワンマン振りが目立っていたが、堅物で、金には縁の薄い人だったという▼そんな人も、輝かしい公務員人生を100万円で汚してしまうのだろうか。考えれば割に合わない話である。現金を目の前にしたとき、人間は、都合の良い理由をつけ、それを拡大解釈して金を懐にするのだろうか。何とも情けない話だ▼北海道では2006年の河野・深川市長の、小学校建設をめぐる談合汚職が記憶に新しく、2009年には、愛知県西尾市の中村市長が、市長室を中心にして3回に渡り600万円分を受け取った。また兵庫県宝塚市の坂上市長が公園墓地整備事業で100万円授受で逮捕。おまけに2006年にも、同じ宝塚市の渡辺市長がパチンコ店出店に便宜をはかり80万円▼その他茨城県の石岡市長、下妻市長が相次いで逮捕されるなど、過去を振り返れば次々に悪事が露呈する。「市長」。重みのある役職、言葉。それがかすんできた。勿論立派な市長さんの方が多いのだろうが、こう次々に事件が起きると、その中にも一歩手前≠フ市長が居るのか?と思ってしまう。