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1347年、シチリアに始まったペストは瞬く間にヨーロッパ全土に広がり、半世紀の間に全ヨーロッパ人口の4分の1が、命を落とした。肌が黒紫色に変色するところから「黒死病」と名付けられた。当時は原因も分からず、人類はこの病に無力。恐れおののき、ただ祈るばかりだった▼1918年、シカゴに発生した「スペインかぜ」=情報の発信源がスペインだったため、この名がついた=は、翌年にかけて全世界に流行し、6億人が感染。約5千万人〜1億人が死亡した。当時の世界人口は8億人から12億人と推定され、全人類の半分以上が感染したことになる▼メキシコ発の「豚インフルエンザ」が、米国、カナダ、さらにアジア、ヨーロッパなど世界中に広がりつつある。WHO(世界保健機構)は警戒水準を従来のフェーズ3から4に引き上げた。つまり、人から人への感染の段階になり、世界大流行を意味する「フェーズ6」を警戒している▼「百年に一度の経済不況」がアメリカ発で全世界に広がり、これに続く「百年に一度の世界的健康被害」が懸念されている。日本も、厚労省が「新型インフルエンザ」の発生を宣言した。世界が、経済と健康の両面から悩まされ、巨大な渦に巻き込まれている▼人類は自らを破壊する大量破壊兵器を開発し、その幻影に怯え、対抗手段としてさらに核を持とうとする悪循環。しかし世界を一瞬にして灰にすることは出来ても、忍び寄る新しいウイルスから身を守る手段は、後手に回っている。言わば、人類は自殺する手段を持っていても、肝心の命を守る手段は稀薄なのである。人類対ウイルスの戦いは遠い過去から続けられ、しかもまだ決着がついていない。そしてウイルスは今、人類に新型≠ナ対抗してきたのだ。