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デスク記事

2009/05/07

 4日死去した元紋別市長・金田武のお人柄をひと言で表現するなら「実直」こそふさわしい。5期20年間、歴代で最長の市長職につき、この間誠意あふれる市政運営を完遂した。議会に、職員に、そして市民に対し、常にソフトな笑顔で対応した▼しかし金田氏は自らの性格について「俺は誰にも負けないくらい短気なんだ。でもそれを見せては市長失格。ハラのたつ時は5秒我慢すること。そしたら次は笑顔に変えられる。君も、そうしたらいいよ」と言われたことがある▼市長を退任するとき聞いた。「市政運営で一番心に残ることは何ですか」と。「もう20年経ったのか…でも、一気だったなあ。そう、心残りなのは名寄本線を守れなかったこと。我が市役所人生で最大の汚点だ。地域の人達に申し訳ない思いで一杯。結局は、霞ヶ関には地域の実情を解ってもらえなかったし、彼等は解ろうとしていない。それを突破できなかった」と唇をかんだ▼当時の市議会は、今の平穏≠ネ議会と違って、与党からも鋭い、時には意地の悪い質問も出た。金田氏は、それらの質問にも誠実に応え、声を荒げたことは一度もなかった。議会で取材していて、金田氏のあまりの丁寧さに「あんな言葉を浴びせられて腹がたたないんですか?」と聞いた。すると「腹をたてて声を荒げても、笑顔で答弁しても、言葉の内容は変わらないんだよ。言葉の意味とはそれだけ鋭いものなんだ」と諭(さと)された▼酒にも強かった。市長就任後、道北市長会でソ連(当時)サハリン州を友好訪問したことがある。強烈なウオッカで乾杯の連続だったが、最後まで残ったのが金田氏だった。「カネタさんはロシア人だね」と相手を感嘆させた。思い返せば、金田氏は実直で豪快な人だった。合掌。