デスク記事
「食べることに困ることはない。他人に左右されるより今≠ェ楽しければ、それでいい」。そんな気持で日々を過ごしている、2人の若者の姿がテレビ番組で紹介されていた。定職はなく、親から一定の生活費をもらい、時にはアルバイトをしながら、彼等なりに不自由のない暮らしが続いた▼しかし、今回の不況で親が職を失い、援助は途絶えた。それでも2人は「食べることはできるだろう」と、相変わらずの日暮らし生活を続けた。しかしある日、それが間違いであることに気づかされた。手元には、カップラーメンを買うことも出来ない小銭が残った。しかもそれ以降の収入の道は見あたらない▼彼等は初めて気づいた。職にありつき、自分の手でお金を稼がなければ、生きて行けないことを。その段階でも彼等は甘かった。いざ就職活動をしても、雇ってくれる企業は皆無だった。真剣に働こうとする意志が稀薄なことを、面接で見破られていたからだ▼ネットカフェに行く金もなく、野宿するハメになり、寒さが身にしみた。生命の危機を感じて初めて、2人は自分たちの置かれている現実を悟った。以降、覚悟をもって面接を受け、ついに就職が決まった。狭いながら寮に入ることも出来、自分の居場所も確保された▼労働は厳しいが、その環境がいかに素晴らしいものか、命の危機さえ感じていた2人だからこそ知ることが出来た。2人は、今までの安易で、自分に対しても無責任な生き方に、今更ながら身震いした▼ある意味、そこまで追いつめられなければ自立出来なかった2人。厳しさは、一歩前進するための最良の薬となった。「不自由」は悪いことばかりではない。人を覚醒(かくせい)させ、自立させる要素を持っているのだ。