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物理学者で随筆家の寺田寅彦は「科学者は、正確で緻密な頭脳と、前途を見通す内察・直感力≠持つと同時に、人知の限界を自覚して大自然の教えに傾注する謙虚な態度が必要である」と述べている。科学者≠ニいう言葉を政治家≠ノ置き換えてみよう▼政治家は、自国が直面している課題を緻密に分析し、今後の対処法を見通さなければならない。そして今や地球全体の課題である環境問題を始め、戦争への危惧、国家間の思惑など、世界の潮流にどう対応するか、方向付けが必要だ▼麻生総理と鳩山民主党党首の討論が今までに2回行われた。現職の総理大臣と、やがて総理大臣になる可能性の高い人物の討論である。その内容の大半は互いへの攻撃であり、欠点の探り合いである。あきれる程の内容のなさであり、子どものケンカ以下とも言えるお粗末さだ▼国民が、二人に期待する討論は、相手をケナして自分を浮かび上がらせるという、質の低いものではない。現在の国民の生活実態を踏まえた、近未来の暮らしへの展望であり、緊迫する国際情勢と日本の対応。そして国際社会での日本の役割である。「点」の域から出ない相手つぶしは、国をリードする役目を担っている方のすることではない▼テレビの向こうにいる国民を意識するのはいいが、自己アピールに躍起となる姿は軽薄であり、人間の大きさが感じられない。どっちに転んだとしても、多くの人は大丈夫かなあ、先が見えない≠ニ思っているだろう▼衆院選はもうすぐ。「政権交代」が大きなテーマだが、それ以前に国民の多くは、日本の政治の質的大転換を求めている。先ずは政治の洗浄をすべき。そして次へ≠ニ考えるのが、国民の心の中の真の声だと思うのだが。