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デスク記事

2009/06/25

 伊藤忠商事・丹羽宇一郎会長の講演を聴く機会があった。その中で「嘘」=うそ=について丹羽氏は「嘘を色に例えれば黒。しかし最近は白≠「嘘も出てきた。これがもっとも質が悪い。黒い嘘は誰の目にも明らかだが、白い嘘は沈黙の嘘で、恐ろしいのは、それがバレなければ、やがて真実になってしまうということ」と語った▼白い嘘について丹羽氏は「例えば、時のリーダーが間違ったことを推し進めても、誰も反対しなければ、それが歴史を作ってゆく。その歴史は国民のためでなく、実際は彼個人の歴史。ヒストリーではなく『ヒズ・ストーリー』なのだ」と言う▼それに関連して丹羽氏は「今の日本は霞ヶ関で物事が決められ、お上の言うことで地方が支配される。地域のことを、霞ヶ関のデスクに座っている人たちにどうして分かるのか。地方には、それなりの特色があり、自分たちのことは自分たちが責任を持って決めれば良いのです。これが成されない限り、日本は永遠に変わらない」と語った▼丹羽氏は「地方分権委員会」の委員を務めており、今の日本のトップダウン方式を批判する。同時に「地域から声を上げるのも地域の責任」と、霞ヶ関支配の責任の一端が、地域にあることも指摘した。そして「企業の社員なら上司の顔色を気遣うことなく、自分の意見をはっきり言うべき。自分の将来がかかっているのだから、当然のこと。それを受け入れない企業に明日はない。それと同じことが、地方自治体もいえる」と、個々の意志を伝えることの重要さを語った▼丹羽氏は「当たり前のことが、そうなっていないのが今の日本。黒い嘘なら本質が見えるが、沈黙の中に隠れる白い嘘こそ恐ろしい」と重ねて強調した。