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ロサンゼルスで長年、開業医として活躍している光岡医師は、カリフォルニア州で生活している日本人にとっては実に頼りになる存在である。自分のクリニックで手に負えない場合は、州内の優秀な病院に連絡をとり、治療の完治まで面倒をみる。長年かかって、そういう体制を構築した医師である▼その光岡医師にお会いして話を伺ったとき、彼はこんな話をしてくれた。「アメリカは訴訟社会。その度合いは深まるばかり。訴えれば、金になる。こっちが正当でも訴えられたらタダでは済まない、嫌な国」と言う▼光岡医師も、かつて交通事故で訴えられ、約1億円の賠償を払った。光岡医師の車のバンパーが「コツン」と相手の車に接触した程度のものだった。その瞬間覚悟したのは「これはふっかけられるナ」ということ。案の定、億の金を支払うことになった▼アメリカ程とは言わないが、日本も次第に訴訟社会になってきた。医療、交通事故、名誉毀損など、以前は訴訟にならなかったものまで裁判沙汰になる。それを利用して金儲けをしようとする人も出てきそうだ▼交通事故で良く聞くのは「青信号で道路を渡ってたので、自分は悪くない。だから車の運転手が一方的に悪い」「子供が飛び出してきた。避ける間もなかった」など。しかし心しなければならないのは、青信号だから何も注意を払わなくてもいいと言うものでないし、飛び出しだから自分に責任がない訳ではない▼人間は、複雑な社会で、個々の見えないつながりで生きている。事故が起きれば、双方に原因があると思わなければならない。人は、誰もが無意識に他に守られている。そして先ずは自分で自分を守り、他を守る精神が必要だ。これからの時代、この心構えがますます必要になってくる。