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お年寄りが後半の人生を安らかに送る介護老人保健施設「サンヒルズ紋別」で1、2の両日「夏祭り」が行われた。裏の広場は色彩豊かに飾られ、屋台が並び、アイスクリーム、うどん、おやき、ジンギスカンなどが出された。入居者と家族、デイサービスで来られる方など、合わせて200人程が、久しぶりの好天の中、笑顔で楽しんだ▼私の母は、ここにお世話になって8年がたつ。後半は寝たきりの生活だったが、この部屋が母の生活の全てだった。食事を楽しみ、職員との会話ひとつひとつが生きる証(あかし)だった。「退屈なんてしないよ。ここには何でもあるよ」と、母の心に大きな宇宙が広がっていた▼松野施設長は「自宅に居れば、何かあってもすぐの対応ができない。だからここに居た方が心が落ち着く」と、以前からサンヒルズで寝泊まりされている。その姿勢が職員に伝わり、常に慈悲の心で接してくれる職員の方々。それは職員手作りの装飾品や、一輪の花にも表れている▼夏祭りに、ボランティアで参加した紋別高校の2人の女生徒が居た。「お年寄りと接するのが好きなんです。笑顔が見たいから」と言う。母も表情を崩しているようだった。母は「楽しいね。アイスクリームもおいしいね」と笑顔だった▼それから2日後の3日朝。朝食を食べさせていただいて「おいしい」と喜んで、眠りに入って、そのまま息を引き取った。あまりにも静かな死。それは心安らかな、日々の環境を提供してくれたサンヒルズの職員からもたらされたものだ▼人生を終えようとするとき、死への旅立ちの道を、私は「花道」と言うのだと思う。一人で歩むその道の両側を、花が迎えてくれれば心やすく歩むことが出来るだろう。サンヒルズの職員が、花を飾ってくれたのだと思った。