←前へ ↑一覧へ 次へ→

デスク記事

2009/08/06

 動物園の象は、子どもの時は太いクサリに繋(つな)がれ、大人になると細いクサリで繋がれるという。大きくなって力が強くなれば、もっと太いクサリに繋がれるのが当たり前と思うが、実際は違うらしい▼小さいときは、自由になりたいという欲求が強いから大いに暴れるけれど、大きくなるにつれ、クサリからは解き放たれないことを知り、もう逃げようとしなくなるらしい。だから細いクサリで十分なのだという▼戦後の焼け野原から立ち上がった日本は、特に経済成長では世界の奇跡≠ニ言われた。その奇跡を生んだ最大の要因が日本人の勤勉さにあると言われるが、その勤勉さの陰には現状に満足せず、可能性を追求し前進する%本人の力強い姿勢があった▼しかし今の日本について、世界は「現状に甘んじ、あまりにも静かで態度に示さない日本人」ととらえている。これを成熟した社会というのか、またはこじんまりと収まった社会というのか、とらえ方はそれぞれ異なるだろうが、たとえば社会の理不尽さ、不満に対してでも、自分は行動をとらないで他の行為を心待ちにする・という国民性になっているようだ▼混乱と貧困から懸命に立ち上がろうとした戦後の日本人が「子象」なら、今の日本人は「大人の象」なのだろうか。少し強く引けば切れるかも知れないクサリ。今の日本の閉塞感から脱出する道が見えるかも知れないのに、課題を抱えながらも現状から抜けることが出来ない▼それを政治のせいにしてはいけない。日本人個々が反省する必要があるだろう。地方自治も、国政も、社会体制全般について、国民の不満は自分たちが生みだしたものだ。地域、国作りの基本が国民個々にあり、前進も後退も、第一義的に私たち個々にあることを、心に据えたい。