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デスク記事

2009/08/22

 19日、稚内から日本海沿いの国道232号(天売国道)を下り、旭川に向かった。落ちかけた陽が海面を鈍色に照らし、あたりの風景がオレンジ色に包まれた。時々通るが、この時刻の、この地域の風景には独特の趣があるようだ▼海と低灌木の原の境目を、直線的にのびる国道。いかにも北海道的な風景である。そんな光景の中に、ポツンと作られた建物があった。それは公衆トイレで、コンクリートの頑丈な、そして自動ドアーの立派なものだった▼これは北海道が、ロングドライブの場所に建設した公衆トイレである。車で移動する人にとっては大変助かる、気の利いた施設と思った。北海道もなかなキメ細かな政策を行っているもの≠ニ実感する▼丁度清掃中で、一人のおばさんが汗を浮かべながら作業をしていた。「ご苦労様」と声をかけると、笑顔で「ありがとうございます」と応えてくれた。そこでしばらく会話を交わした。道から清掃を委託されている周辺に住む方で、「これがなかなか大変なのよ」と言う▼地下水を利用しているので、水が出ないときがあるそうだ。この日はたまたま水が出ていない時で「こんな時は家から水を汲んできて、それで清掃をしなければならないの」と、確かに大きな入れ物から水を汲んで、丁寧な作業をしていた▼「ホラ、すぐそこが海でしょう。だから、金具類が錆びてしまうの。ネジが回らなくなったり、水が止まらなくなったり…。他にないここだけの特徴かしら」と、作業の手を少し休めてまた笑顔を作る。「でもネ、一番望みたいことは、きれいに使って欲しいことよ。ちょっと気を配ってくれれば、清掃も少しは楽になるんです」。このきれいな風景、助かるトイレ。そして人の努力。使う人は心したいものだ。