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昨年暮れからのアメリカ発経済不況は、瞬く間に世界に広がり、各国は懸命になって脱出をはかっている。日本はようやく回復基調になって来たようだが、国民の生活感とは相反する面を持っている。もしかしたら、今後の日本経済の構図は「企業栄え、国民困窮」になりはしないか▼今回の世界不況で、企業は“繁栄から一夜にして経営危機”の現実を体験した。中小・零細企業は次々に倒産、廃業を余儀なくされ、中高年の自殺が戦後最大に急増した。全ての企業は当然のことながら経費節減を行い、その主たるターゲットは従業員の解雇、整理である▼市場理論は企業の存続。当然のことながら失業者が急増した。今回の経済不況を経験した全ての企業は、今後経済が回復しても、雇用には慎重になるだろう。安い労働力を求めて海外に生産拠点を持つ企業も増え、国内では外国人の雇用が多くなる可能性がある▼同業企業の提携が促進されている。25日の新聞だけでも「ローソンとマツモトキヨシが今後5年間で千カ所の共同店を展開」「キリンとサントリーが経営統合へ」「住宅サッシ5社が規格統一」「日本の自動車メーカー、コスト削減は海外勢より早い」…などなど▼企業の経営が回復に向かっているとは言え、その内容は過去とは異なる。企業間にどこか脅(おび)えの影が見え隠れする。消費者の購買意欲の減少、縮む市場で、同業企業間同士の警戒感が増幅し、それを払拭するための企業提携が、広がっている▼消費者は、生活を守るために出費を控え、企業は生産コスト削減、合理化に懸命だ。全体が小さくなってゆく状況は、今後も続くだろう。企業はアジアの新興国に活路を求め、日本人の失業は益々深刻化する。時代は、一国の範囲を超えようとしている。