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デスク記事

2009/09/24

 「赤とんぼ」とは、アカネ属のトンボの総称である。エゾアカネ、ミヤマアカネ、ヒメアカネ、アキアカネなど、日本では20種類を超えるという。紋別では最近はあまり大群を目にしなくなったが、以前は空を覆う程の群れが、羽音をたてて飛翔していた。「夕焼け小やけのアカトンボ…」の歌に代表されるように、日本人の心に深くとけ込んでいる昆虫と言えるだろう▼少年時代、人差し指を高く掲げると、時には指先に止まって、羽を休める可愛い奴(やつ)も居た。親指を素早く閉じるとトンボの足の感触が指先に伝わり、たまには捕まえることも出来た。あわてて羽を動かして飛び立とうとする姿を見て、そっと指を離してやった。そんな時、自分を信じて指に止まってくれたトンボに後ろめたさも感じていた▼しかし、あんなに大きな群れで飛翔しているのに、赤トンボにはどこか寂しさがある。孤独感にも似た、もの悲しさが、その姿から漂ってくる。秋にふさわしく、夕焼け色を身体にまとったような、クッキリした色をしているのに、もうすぐ消えてしまいそうな、そんな哀愁が赤トンボにはある▼童謡「赤とんぼ」は、作詞の三木露風が、子供の頃の故郷への郷愁から作ったと言われ、その後山田耕筰が曲をつけた。平成19年に「日本の歌百選」のひとつに選ばれているが、日本人が最も良く知っている童謡のひとつの言えるだろう▼「赤とんぼ」を歌うとき、多くの人は幼年時代を思い浮かべ、あるいは故郷に思いを馳せる。そしてその先には、無意識に、純粋なものへ回帰する心の動きがあるのではないだろうか。今の時代、人は知らず知らず何か大切なことを忘れてしまう。そのことを「赤とんぼ」は思い出させてくれるような気がする。