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非常に格調の高い、そして日本の在るべき方向を明確に示した演説だった。職に就けず、命を絶った息子を持つ母親の悲しみの訴え、養護学校生の採用を続けている企業の社長さんの声。鳩山首相は「社会の中で、ささやかな居場所すら見つけることが出来ない方に、政治は鈍感だった。日本の伝統を今に活かし、政治を立て直そう」と、一人一人を大切にする政治姿勢を鮮明に打ち出した▼社会、経済、地域主権、そして外交、世界平和、広範囲な政治課題に対し、それらを人間への愛≠ニいう、人類に今最も大切な課題で一本の共通の線にした所信表明は、今後日本が未来に向けて歩む方向を明確に描いた。国民が待ち望んでいた、政治の姿ではないだろうか▼日本が今後、人類の生存のためになくてはならない国だと、世界の国々から尊重されることが、日本を守る最大の要件になるのではないだろうか。争いから進歩は生まれない。他への否定から調和は生まれない。しかし世界は今、その方向に向いている。日本が、その軌道修正の役割を果たすべきだ▼残念なのは、鳩山首相の所信表明を聞く議員たちである。民主党など与党議員は、祭囃子(まつりばやし)のように歓声をあげ、拍手の嵐。議場が軽薄になってしまった。鳩山首相の演説を、我が議員活動の原点として、心に浸透させた議員は何人いたであろうか。素養に欠けるにわか作りの議員≠フ感免れず、閣僚にさえ同調性が感じられなかったのは何故だろう▼日本は、間違いなく歴史上の転換期に在る。数十年後を見据えた改革の時である。国民が心を引き締めて、世界をリードしてゆく気概を持たなければならない。