←前へ ↑一覧へ 次へ→

デスク記事

2009/11/27

 南が丘の市道で、風に遊ばれヒラヒラするもの。一枚の千円札だった。車を止めて拾ったが、正直なところ警察に届けるべきなんだろうが、面倒だなあと思った。会合の時間が迫っていたので"警察には後で"と、勝手な理由をつけた。2日後、会社に出勤して思い出した。あっ、千円札=・でも、矢張り面倒だ。社会福祉協議会が会社の窓口に置いて行った赤い羽根の募金箱が目に入った。「どなたかからの天の恵みだ」と、そこへ千円札を入れ、一件落着と思ったが、そうはゆかない。落としたのが子供だったらどうだろう。小遣いとしては大金だ。または母親に買い物を言いつかったお金かも知れない▼それより子供が警察に届けて、届いていないと知れば心は傷つき、社会への信用を失うかも知れない。子供の心を裏切ることは絶対に出来ない。矢張り警察に届けよう。社員が「同じ紙幣でなければ」と言う。余計なことを言うものだ。でも預かった募金箱を壊すことも出来ない。その時は警察の窓口の人に会社に来てもらおうと、みんなで結論に達した。しかしその日は特別に忙しく、また届けそびれてしまった▼翌日は札幌の会合に間に合わせるため早朝一番のバスに。丁度用事で札幌に行っていた妻と落ち合い、車で帰ってきたのは夜中。そしてようやく届けたのは、拾ってから5日後のこと。矢張りドキドキする。5日遅れの別の千円札。何か言われそうな気がしたが、窓口の職員は笑顔で受け取ってくれた▼落とし主から届けはなかったが、これで本当に一件落着。拾わなかったら、こんなに回りくどいことをしなくても良かったのに。しかし考えてみれば、悩んだ末に、私はさらに千円を損したのだ。誰ですか2千円の損だなど言う人は。