←前へ ↑一覧へ 次へ→

デスク記事

2010/01/27

 1989年、国連で採択された「子どもの権利条約」は1924年の「児童の権利に関するジュネーブ協定」が元になっている。その精神は、児童文学作家で医師でもあるユダヤ系ポーランド人・ヤヌス・コルチャックの教育思想が影響している▼第二次世界大戦下、ナチスの弾圧はコルチャックが運営する孤児院にも及んだ。アウシュビッツのガス室に連行される児童たち。ナチスの将校はコルチャックを生かそうとそこから先に行かないように≠ニ言ったが、彼はそれを拒んだ。子供は恐怖心で身体を震わせながら泣き叫ぶ。コルチャックは子供たちにこう言った。「みんな、怖がることはないよ。先生も一緒だからね」と手を取り合ってガス室に消えた▼小沢民主党幹事長の腹心の部下3人が政治資金規正法違反などで逮捕された。その中には現職の国会議員・石川氏も含まれる。3人は自ら責任を負い、小沢氏の関与を否定し続けている。小沢氏は25日の記者会見で「担当者にまかせていたが、私の責任はある」と監督責任を認めた。しかし自分の関与を否定。幹事長を続けることが責任だとした▼前途ある若い議員をかばうことなく、身を粉にして働いてきた秘書を擁護することなく、その犠牲の上に自らの地歩を築こうとしている小沢氏。彼が急に小さな人物に見えてきた。何か事が起きた時、最終的な責任を負うのがトップリーダーの素養である。だからこそ人はついて来るのだ▼これで、逮捕された石川議員も分かっただろう。もう自分を犠牲にしてまで小沢氏に義理だてをする必要はない。コルチャックのような信念もいさぎ良さもない、自己本位の人物とは決別すべきである。政治家として入口に立ったばかりの石川氏は、過去から脱皮する時だ。