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「戦後の日本が経済成長一本に邁進することが出来たのは、安全保障を基本とする日米同盟があったから」という考え方は、今では定着していると言える。しかし日米同盟とは何か。有事の際、本当にアメリカに依存できるのかどうか、日本の安全を守るため、アメリカが命をかけてくれるのか▼そんな疑問は常にある。防衛官房長、同事務次官等を歴任し、先の接待疑惑で逮捕された守屋武昌氏は「そんな本質的なことの裏付けさえ一切協議されることはなかった」と言っている。冷戦時代から現在、そして未来に向けて、日本の安全の基軸になっている日米同盟が、実は確固たる基盤に立っていないことを守屋氏は語っているのである▼国民の目には「官僚の風上にも置けない人物」と映る人だが、今問題になっている沖縄・普天間移設などで彼が見せてきた手腕を高く評価する声は、日・米双方にある。日米同盟を最も良く知り、故・橋本総理、梶山静六氏の「戦後を終わらせたい」の思いを、その象徴である普天間基地の移設という離れ業を成し遂げた守屋氏が、日米同盟の脆弱さを指摘している▼普天間基地の移設問題で、鳩山政権が迷走しているのは誰もが指摘するところ。何故迷走するのか。それは、複雑な沖縄問題、基地をめぐる過去から現在に至る時系列が、全身に染み渡っていないからだ。生まれたて内閣の、にわか仕立ての知識で対応出来る程、この問題は単純ではない▼日本の安全の根幹である日米同盟が、実はかなりあいまいで、場合によっては大きく揺らぐ問題を内包していること、そして普天間の移設問題が今後の同盟のカギを握っていること、その重大な課題を、迷走する鳩山内閣が握っていること。日本は今、かなり危険な場面に直面している。