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デスク記事

2010/01/30

 王道を行く貴乃花親方。邪道を行く朝青龍。相撲協会が揺れている。2年後の理事選挙を待てば理事に就任できる貴乃花だが、八百長相撲疑惑、いじめによる力士の死亡事故、薬物汚染など、日本の国技・大相撲の堕落に、彼は我慢できなかった。理事になり発言権を持ち、大相撲を王道に戻そうとした▼静かな語り口調の中に、強く秘めた思いが伝わってくる。現役時代、受けて立つ万全の四つ相撲に徹した。当時、身体の大きな実力のある外国力士、日本人力士が多い中で、あくまで横綱としてのプライドを保ち続けた。貴乃花が引退して以降、日本人横綱は誕生していない▼今回の理事選挙は勝ち目の薄い立場という。それを承知で「土俵に恩返しがしたい」と、角界に一石を投じた貴乃花親方。王道を歩むと言うことは、茨の道に踏み出したことを意味している▼正反対の道を歩いているのが朝青龍。泥酔して暴力沙汰を犯した罪は、犯罪事件としては勿論だが、国技である相撲の頂点に居る横綱としての罪の方が重い。しかも場所中の出来事。酒を飲んだあと土俵にあがる暴挙は断じて許し難い。国技に背を向け、冒涜(ぼうとく)するものだ▼今まで多くの問題を起こしてきた朝青龍だが、横綱としての強さと無邪気な言動がファンを増やしていた。相撲協会としても、興業の目玉力士として欠かせない一面もあっただろう。しかし大相撲を神聖な国技として今後も維持し、発展させて行くためには、今回は決して許してはいけない。破門し、2度と土俵に上げるべきでないだろう▼年間の4つの本場所だけが大相撲ではない。巡業を含めた年間計画の全てが神聖でなければならない。貴乃花親方の精神が活かされ、朝青龍を切る英断が、相撲協会には求められている。