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デスク記事

2010/02/04

 紋別警察署の藤村博之署長が2日、紋別港ロータリー・クラブの例会に招かれ、以前に道内で発生した、飲酒運転による交通事故の悲惨さを話した。署長は「署員の気持ちを引き締めるために、当紋別署でも講話しています」と前置きした▼飲酒運転で対向車線にはみ出した車が、対向車と衝突し、双方の運転者が死亡した。日時を経て、飲酒運転をした人の奥さんから、警察署長に一通の手紙が届いた。「被害を受けました方には少しでもお詫び、弁償をしようと、家を建てるため少しずつ貯めていた98万円と、テレビも洗濯機も、指輪も全て売って、合わせて120万円を作り、お持ち致しました。しかし先方はこんな少額では納得出来ない。親戚回りして金を作れ∞働いて毎月弁償せよ≠ニ許してくれません▼私は子供を育て、教育しなければなりません。でも生活費さえないのです。子供はなんでうちにはテレビがないの≠ニ言います」。「子供2人は今何も知らずスヤスヤ寝ています。私は、生きてゆく根気も気力も失いました。子供だけを残してゆくことは出来ません。夫は自業自得ですが、子供にまで罪はあるのでしょうか。これから3人でお父さんの元に行きます」▼飲酒運転が、自分の家族を、そして真面目な運転をしていた相手とその家族を不幸のどん底に落とし込んだ。事故の起きる一瞬前までは、やがて持てるかも知れない新居を夢見、子供達と夫の帰りを待っていた。相手の家庭も、まさか最大の悲劇が起きることを夢にも思わなかっただろう▼全ての歯車が、飲酒運転により狂ってしまった。何と悲しく、恐ろしい話だろう。ひとつの反社会的行為が、周辺を瞬時に破滅に巻き込んでゆく。自己本位の安易な心。その隙間に悲劇は忍び込む。