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デスク記事

2010/02/13

 「いつも選挙は金次第、利権取りまぜ、ばらまく時は、如何なるヨイヨイも立ちあがる、ドブのネズミもはい廻り、白い豚でも黒くなる」。三島由紀夫のエッセイ集「不道徳教育講座」の中にある一節である。43年前に書かれたものだが、今の政治の状況にも当てはまっているようだ▼際どい手法であっても、金を手に入れれば人の心を動かせ、それを力にする。動かされた人は自分のために理屈付け、自分に言い聞かせて正当化させる。白い豚を黒いと言っても、それを正義とネジ曲げ、やがて思いこみ、慣れてゆく▼小沢氏は、秘書のやったことに「責任を感じます」と言いながら、責任の取り方を幹事長続投と言う形にスリ変えた。それが許されるなら、今後どなたでも「それは秘書のやったこと。自分は国民のために政治に全力を」と言えば良いことになる。子供たちには聞かせたくない奇妙な理屈だ▼自分の意見も言えずオザワ≠ニ聞けば少しも迷わず、全てを正論と自分に言い聞かせ、小沢氏のために奔走する抜け殻のような人たち。ただ人数合わせの役割しかないその他大勢。議場に、コケシ人形が並んでいるに等しい▼民主党を離党し、無所属で議員活動をする石川氏。今こそ小沢氏の呪縛(じゅばく)から解き放たれ、身も心も軽やかに議員活動に専念せよ。踏み台の泥も払わず立ち去る親分≠ノ、義理立てする必要は全くない▼巨大なら、悪も許されるのか。小さければ、虫けらのように踏みつけられても仕方ないのか。それが、今のところまかり通っているのが今回の小沢事件だ。総理大臣も各閣僚も、何もなかったように涼しい顔をして議場に座る。これを異常と言わず何を異常と言うのだろうか。三島由紀夫が生きていたら何と言うだろう。