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「腫(は)れ物に触るような」。民主党の小沢幹事長に対する同党議員はもとより、鳩山首相、閣僚の接し方を見るに付け、そんな言葉が浮かぶ。小沢氏の影に怯(おび)えるように、言動には最大限の神経を使い、まさに腫れ物に触るようだ▼昨年の衆議線で圧倒的な勝利を得た民主党だが、個々の議員の顔は見えず、実質、鳩山総理と小沢幹事長、それに少数の閣僚による閉鎖された中で、国政が行われている。個々の議員は、党の数の優位性を保つための、員数合わせだけのために存在しているようなものだ▼しかしその腫れ物にも、最近かさぶたが生じているようだ。政治と金の問題に鋭い視線を向ける国民感情が、かさぶたをさらに厚くし、腫れ物を皮下に埋没させようとしている。それを密かに望み、虎視眈々と浮かぶ瀬を模索している同僚議員たち。正面突破の出来ない日和見(ひよりみ)議員の様子は、滑稽(こっけい)でもある▼最近、かさぶた付けに手を貸す議員も出てきた。世論に合わせて、ようやく少しだけ自己主張しようとする、小沢氏に距離を置く議員たち。それとてもっと明確な意思表示を≠ニ注文をつけたくなるような、遠まわしの発言が多い。何故それ程までに遠慮する必要があるのか▼ネコの首に鈴をつけるのは誰か。あるいはネコが自ら権力の座から退くのを期待しているのか。腫れ物が引いたかどうか、下手にかさぶたを剥がせば状況はさらに悪化し、自分が大ケガをするかも知れない。それなら内心とは別に、ここはしばし静観して時間稼ぎをするのが良いのか、思考をめぐらしているのが現下の状況のようだ▼しかし、正面突破する人物が出てこないことが、この国の悲しさである。民主党の実力、ここまでか。