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デスク記事

2010/03/17

 東京・墨田区に建設中の「東京スカイツリー」は、自立式電波塔としては世界一の高さ(634メートル)を誇る。そのライティング・デザインが発表された。コンセプトは「江戸〜現代」「下町から日本へ広がる地域性」「地球に優しい、環境時代にふさわしい」など盛りだくさんだ▼ライティングを計画した方によれば、江戸で育まれた「粋」と美意識の「雅」=みやび=の心が、日替わりの照明で展開するという。色彩の中心は水色と江戸紫。中間色の日本ならではの美意識を表現する▼LED(発光ダイオード)を駆使し、発色が困難とされてきた江戸紫を東京の空に浮き立たせ、日本の技術力の高さを全世界に示すネライもあるという。長期に渡る政治の混乱、経済の後退など、芳しくない話題が日本列島を覆い尽くしているだけに、ゴロ合わせではないが「スカイツリー」のスカッとした話題が爽やかだ▼日本人の特性とは何だろう。それが置き去りにされているような気がする。長い間の政治の混乱が産業・経済振興にブレーキをかけ、日本人の心から落ち着きを奪っている。日本民族が持つ知性、高度な技術力が、勤勉という特性に裏付けされて今日の日本を築いてきた。何も慌てることはない。今必要なのは私たち日本人そのものを見つめることであろう▼隅田川添いに建つスカイツリーは、その象徴になって欲しい。日本人の誇りと平和を求める心を、古(いにしえ)からの伝統文化に乗せて、次の世界全体の平和への歩みとして示すべきである。今の人類の行く末は決して明るいとは言えない。闇を照らすスカイツリーのライティングが「雅」を象徴する。世界もまた、ぎくしゃくした対立ではなく、雅やかな関係であって欲しい。