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4月下旬に宮崎県の農場の和牛に発生した口蹄疫で、今月27日の時点で殺処分の対象になった牛、豚の累計は十五万二千頭強になっている。殺処分前提でワクチン接種を終了した牛、豚を合わせると二十七万七千頭強になる。残念ながら治療法はない。発生した時は、家畜伝染病予防法に基づき、蔓延防止のため殺処分対象となる▼蔓延防止のためには広範囲に渡っての処分となる。このため口蹄疫にかかっていない多くの牛、豚が処分されることになる。それが二十七万頭という、驚くべき数字になっている。飼育農家の「元気なんだ。殺さないで」「もう少し様子をみてからにしてくれ」などという悲痛な声が起き、助命運動が起きているのも当然だ▼日本が世界に誇る食用和牛。嗜好品としても恩恵に浴してきた人間。ただ食用のために飼育され、食べ頃になると命を絶たれ、味を求める人間に消費される。人間の食文化と言えばそれまでだがお陰様≠フ動物の命を、もっと深刻なものとして考える必要があるのではないか▼二十七万頭という、強烈な殺処分の頭数を思い浮かべるとき「人間は何かの罰を受けるのではないだろうか」という思いが素直に沸いてくる。もっと牛、豚の命の尊厳というものを思う姿勢があっても良いのではないか▼非感染牛を生かすため、経過観察用に特定の地域を指定し、そこに移動させ、一頭でも多くの牛・豚を殺処分にしない対策をほどこすなど、多様な対応をとることも大切ではないだろうか。強い伝染性のある病気のため殺処分しかない≠ニいう答えが返ってきそうだが、私たちの食生活に命を提供してくれている牛や豚に最大の配慮をすることが、人間としての礼節のように思う。