デスク記事
帯広に2001年、中心街の空き駐車場を活用して「屋台村」が出来た。市民はもとより観光客などの人気を集めている。帯広に行く度に、ここで友人達と時間を過ごす。数十軒が軒を並べているが、それぞれに個性があって、どの店に入っても楽しい▼先日の土曜日、知人2人と共に一軒の店に入った。どの店もそうだが、7、8人入れば満員になる狭さ。私を含め3席が用意されていた。予約しておいたから入れたのだという。この日はどの店も満員の様子。入りそびれた観光客などが、それでもノレンを分けて「ダメですか?」と声をかけてくる▼「よーし、みんな詰めるか」と、居合わせた客同士「観光客は、またいつ来れるか分からないのだから」と、イスを寄せ合った。12人で、まったく身動きできない状況になったが、こうなると全員がひとつになって、勝手気ままな会話が飛び交う。横浜から来た観光客で、明日帰るという。最後の夜を賑やかに屋台で過ごせて嬉しそうだった▼「帯広は、今がアスパラの旬でして、もうすぐ、日一日と味は落ちてゆきます」と言う。「今の時期は朝穫りアスパラしか出しません。帯広の名誉にかけて」と、マスターは次々にアスパラ料理を出してくる。「そうですか、旨(うま)いですか。その言葉に感激して、ハイ、一皿サービス」と、観光客を喜ばせる▼たまにはカラオケのない、人間の声だけの場所もいいものだ。狭い空間だから、全部の会話が聞こえてくる。だから、知らない同士が自然に声を掛け合い、笑顔がついてくる。何の飾りもない、ありふれた話。だからこそ疲れない。屋台の雰囲気は、昔の日本の長屋に通じるものがあるようだ。消えて行った日本文化を、知らず知らず追い求めているのだろうか。