デスク記事
ワールドカップ・サッカーで、日本とオランダの試合が行われた19日、浅草の演芸ホールに寄席を聴きに行った。テレビでサッカーも見たかったけれど、ドップリ寄席につかる機会もそうないと思った。午後5時から9時までの4時間という公演、ホール内で販売している「助六弁当」を買って、寄席気分にひたった▼お囃子(はやし)の後、前座の若い女性落語家から始まった。ここまでは良かった。しかし私のような素人目にも、暗記しただけのような話の運び。客に聞かせるようなものではなく、一体感がないため観客との距離は遠い。残念ながら拍手する気になれなかった。高座に上がるまでには、きっと厳しい修行の年月があったはずなのに、彼女からはそれは感じられない▼その後次々に出演してくる噺(はなし)家、その多くが声が小さかったり、気が乗らない感じであったり、特に気になったのは発音が悪く、言葉が聞き取れないこと。何を言っているのか推測するしかない。周囲の観客の反応もどうしたんだろう≠ニ首を傾げるものだった。また、マイクの使い方が悪く、噺家の声が観客に伝わらない▼落語は日本の伝統文化として世界に誇るべき財産なのだ。それが色あせて見え、この時だけの感想を言わせて貰えば、落語の凋落(ちょうらく)を予感させるものだった。話芸なのに声が聞こえなかったり、何を言っているのか分からなかったり・これらは論外である。この日が特別調子の悪い日だったことを願いたい▼これでは楽しくない。とても最後まで聴く気にはなれず、晴れない気持ちを抱いてホテルに帰り、サッカーの試合を観戦した。しかし、サッカーを忘れさせるような、最後まで惹(ひ)きつけてくれる落語であって欲しかった。