デスク記事
鹿児島県阿久根市は、人口2万4千人弱の水産と農業を基幹産業にしたマチである。地方都市の共通の悩みである少子高齢化の悩みも抱え、南と北の違いはあるものの、紋別市と非常に似ている都市と言える。その阿久根市に奇跡と言われるスーパーがある▼社長の名前は牧尾英二氏。自動車の設計士だったが、親族が経営するホームセンターが倒産の危機に面し、阿久根市に呼び戻された。「天命だと思いました。地域のため≠サれだけを考え、地域の人の要望を聞いて回り、経営に活かしました」と語る▼野菜も魚も、地元のものを仕入れた。しかも身体に良いものにこだわった。「大トロや霜降り肉は身体に良くない。美味しい食品はあまり売るな」と、有機野菜を店頭に並べた。仕入れは地物。野菜は品薄になったので、荒れ地を耕し、自分で野菜を持った▼巨大な店舗「A・Zはやと」には何から何まである。食品に限らず仏壇から車まで。地元の業者と提携するなどして「地元」に徹した。地元の業者はお客さん≠モットーに農業から水産、製造業、同業者など多くの地元企業と共存関係を築いた▼開店から13年。各地から出店依頼があるが、地元からの調達が大原則なので、県内にまだ3店しかない。車を運転できない高齢者などのために、車で迎えに行くサービスも提供している。消費が底冷えする時代でも、利益率は伸び続けている▼「地方には潜在的な力がある。それを引き出せば地域は輝きを増す」を心に、自分の住むマチ阿久根市の活性化を目指す。地域の発展こそ自分の喜び、使命と考え、地域の企業みんなの力を結集している。地元のために≠ニいう固い意識は、自分の企業にも、自分の住むマチのためにも、力を発揮するのではないだろうか。