デスク記事
書店で本の内容を見ていて、一定の時間がたつと、以前なら店主がやってきて「そろそろお止め下さい」と注意されたものだ。買わないで立ち読みする人を牽制(けんせい)するためでもあったが、本の汚れを防ぐ意味もあった▼最近では、立ち読みは暗黙のうちに許されているようだ。しかし中にはもう少しのマナー≠ェ必要な客も居る。本の上にバッグを置いたり、濡れた傘をそのまま本に立てかけていたり、中には並んでいる本の上に腰掛ける人もいる▼求める本が明らかに汚れている場合もある。誰かが立ち読みしたあと次≠ノ備えるためか、ページの端が折られ、目印にされているケースもある。指をなめながらページをめくる人、クシャミを本に向けてする人など、無神経な場面を時々見る▼出張などの際、書店に入るのが日常になっているが、どこのマチに行ってもそんな光景に出合う。そういう本は買う気にはなれないが、一冊しかない時は、さあ、どうするか困ってしまう▼レジの前に数人が並んでいるのに、数冊持ってきて「カバーを掛けて下さい」と店員に求める。釣り銭がないようピッタリ代金を払うのは望ましいことだが、サイフは勿論のことバッグの中を長い時間かけて小銭を探し、結局は大きな紙幣を出すなど、状況を全く気にしない人も居る▼本の楽しみは、ページを開いたときの新鮮な香り、紙の質感、そして何よりも、自分として始めて本の内容に入ってゆく喜びである。それがページ間に空気がたまっていたり、指の跡などがついていたりすると、それまでのワクワク感が一気に消えてしまう。内容を確かめたい時は、本を少し開けて、遠慮しながら見る位の気配りが必要だ。店員さんも、少し気を配って下さい。