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紋別自動車学校の本間指導員の話を聞く機会があった。それによると昭和22年から昨年の平成21年までに、北海道内の交通事故で死亡したのは31938人にのぼる。紋別市と滝上町に住む人が、消えてなくなったと同じことだ▼紋別署管内を見れば、昭和43年に14人だったものが、昨年は3人と少なくなっている。道路事情の改善、安全運転への意識などが高まってきた結果と言えそうだ。しかし紋別にとって死亡事故ゼロは悲願。ゼロの年がないのは悲しいことだ▼15日、所用で道北の礼文島を訪れた。フェリーで港に着いた途端「昨夜21歳の島の男性が、車の運転を誤りガードレールに激突して死亡した。5年以上なかったこと」と、迎えてくれた知人が話してくれた。島は悲しみに暮れているという。その夜、通夜が営まれた▼彼は中学を卒業してすぐ、父親の跡を継いで漁師になった。ウニ、コンブ漁。見る見る腕を上げ、一番漁を何回も経験し、礼文の漁業を背負って立つ若者に成長した。若い人が島から出てゆく傾向の中、彼の存在は島の若者を勇気づけ、礼文に残る若者も増え始めた▼彼を良く知る同年齢の女性の話を聞くことが出来た。「明るく、いつも笑顔で、悩みなどなかったと思う。人を勇気づける才能があり、漁師に誇りを持ち、漁に出るときはいつも力一杯の仕事をしていました。真面目で、とても力強い人でした。ただ、車が好きで、時々スピードを出していたのが気がかりでした」▼「携帯でメールをしたのですが、いつもはすぐ返事が来るのに、その日は来ませんでした。事故はその後に起こったのです。通夜で涙もかれたと思ったのですが…」と、また涙ぐむ。島中が家族のような礼文。一人の若者の死は、大きな波紋となって島中を覆っている。