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デスク記事

2010/09/01

 宮崎大学に留学した後、チベット自治州畜牧獣医センター長として活躍している宋仁徳さんから、今年4月に起きた宋さんの住む中国青海省の大地震についてメールが転送されてきた。ようやくインターネットの環境が戻ったもので、地震の恐ろしさを十二分に伝えるものだ▼「山から異様な音を耳にし、妻と一緒に外に出た直後に家が崩壊し、同じ棟の住人7人が生き埋めになりました。素手で懸命に掘り起こしましたが助け出せたのは1人で、とても悲しかった。行方不明者の捜索、疫病を防ぐための消毒、4万頭を超えるヤクや羊などの死骸処理に当たりました」▼この地震で、この地区の死者・行方不明者は2700人、民家は1万5000棟が倒壊した。宋さんは今でも地域の復興に全力を傾けている。宋さんはメールの中で宮崎県で発生した口蹄疫について触れ「獣医師として胸が痛みます。動物を助けるのが仕事なのに、蔓延を防ぐために殺処分しなければならないのは、耐えられないことです」▼インドネシアのスマトラ島で、シナブン火山が噴火した。大きな爆発のようで、付近の住民1万人以上が避難している。私は5月、この地を訪れ、シナブン火山の麓にある温泉に入った。地元の人と交歓し、親切なもてなしも受けた。その人たちが今回災難に遇った▼マンゴー売りのおばさんが「いいよいいよ、日本の方でしょ。味見をしてゆきな」とお金を受け取らなかった。温泉プールで会った方は「インドネシアに温泉は少ないのさ。でも、ここの温泉は一番。あの火山のお陰さ」と笑顔で話してくれた▼あの、人情の篤いシナブン地域の人たちの顔を思い浮かべる。宋さんも、そしてインドネシアの人たちも、自然の脅威と立ち向かっているのだ。