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「いったん志を抱けば、いやしくも弱気を発してはいけない。たとえその目的が成就できなくても、その目的の道中で死ぬべき」「この世に生まれたからには、己の命を使い切らんといかん。使い切って生涯を終える」幕末の志士・坂本龍馬の言葉である▼NHKの大河ドラマ「龍馬伝」が人気を博している。日本人にとって、坂本龍馬が歴史上の「ヒーロー」であることは間違いない。また故・司馬遼太郎の「竜馬がゆく」で、その人物像、風雲児としての龍馬が日本人の心にさらに定着した感がある▼大河ドラマで演じられる坂本龍馬に、なぜこれ程まで心が惹(ひ)かれるのか。多くの人は知らず知らず、現在の不毛の政治状況と幕末の混乱の時期を重ね合わせているからではないだろうか。私欲なく、自己の命をただ純粋に、明日の日本の黎明に向け直進する▼時代が怒濤のように動く中、龍馬は日本の今を見つめ、世界の中の日本を思い描き、土佐から江戸、そして世界に向け激走する。その姿は魅力にあふれ、力強く、爽快である▼昨日の言葉と今日とが異なり、行動が一致しないフラフラのひ弱な政治家。「私の政治生命を賭けて」と絶叫しても、すでに政治生命を終えていることを自覚していないアンバランス▼世界の中の日本の生き方など、そんなテーマはどこへやら、コップどころか盃の中の茶番劇。どっちが勝っても負けても、次の劇的な転換無くして明日の日本は見えない。この低次元の不毛な抗争が終わり、次の次の政界再編成が早く実現するよう、焦りに似た気持ちになる。幕末の時期と平成の今とは非常に似ている。しかし疾風の如く目的に向かう坂本龍馬と、今の自称リーダー≠ニのあまりの落差に、限りない淋しさを覚える。