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デスク記事

2010/09/11

 「元気のある日本に」「元気を取り戻そう」と言う言葉が盛んに出回っている。経済が活性化せず、GNP(国民総生産)が中国に並ばれ、やがて抜かれようとしている。政治も「失われた10年」から「失われた20年」になろうとしている。経済成長が著しかった頃に比べ、日本国内に活力がないように見える▼本当に元気がないのだろうか。では、一般に言われる元気とは何だろう。多くの人は「経済・産業が上向きであり、金回りが良く、企業に活力があること。そうなれば給料も上がり消費も増える」などと答えるかもしれない▼しかし、全ての面で不足していた戦後の時期、何とか国民の生活レベルを先進国並みにと懸命になって頑張ってきた昭和期。戦争で全てを失った日本人が一歩の前進≠目指して努力を続け、それが世界から「奇跡の経済成長」と言われる近代国家を築いたのだ▼昭和の後半から平成の時代に入って、いろいろ問題はあるだろうが、日本は過去を土台に成熟社会に突入することが出来た。急な坂から、すでに坂の頂上に立ったのである。だから、これからは下り坂を歩むことになる。決して悲観的な意味でなく、従来のように無我夢中に走るのではなく、息を整え、今後は質の高い国民生活を目指すのである▼国にとって坂を上り、下る時期はそれぞれ異なる。しかし、一国が坂を上って居られるのは50年もないと言われる。誰でも坂道を上っている時は元気が良い。だから、幸いにして頂上に到達することが出来たら、汗を拭いて周囲を見渡し、他に貢献する国作りを目指すべきなのだ。上っている時は足元しか見えない。しかし下るときは視界が開け、遠くまで見渡せる。そこに成熟した国の、世界平和への重要な役割があるはずだ。