デスク記事
最近、私宛に送られてくる商品のパンフレットの中に、私個人の名前を各所に印刷し、あたかも私だけに語りかけてくるような、そんな案内文が添えられている。名前の部分だけ書き換えて印刷していることは分かっているが、それでも個人名を印刷するのは、結構手間がかかる事は間違いない▼先月札幌で、東京学芸大の客員教授の藤原和博氏の講演会があった。その中で藤原氏は「日本は成熟社会に入ったため、個人の消費の仕方は個々バラバラになって行く。つまり生産者(企業)は一人一人のために製品を作らなければ、買ってもらえない。今日本では、個人の嗜好(しこう)に合った製品を作る企業が、増えてきています」と言う▼藤原氏は全くオリジナルの時計を、彼のネットワークを使って完成させた。名前は「ジャパン」。文字盤は長野五輪の金メダルを作った漆(うるし)職人のもの。「ジャパン」とは漆という意味だ。ムーブメントはセイコーのもの。信頼性に問題はない▼藤原氏はさらに言う。「ヨーロッパなどの一個一個の手作り時計は、一般の人には手の出ない高額なもの。それに比べれば「ジャパン」は比較にならないくらい安価です。しかも世界で一個の、その人のためだけの時計です。そのように、時計に限らず、自分の好みのものを自分がプロデュース出来る時代になった」と▼これは物販だけに留まらず、例えば観光なども従来の団体≠ナはなく、家庭、個人が自分好みの旅行を考え出し、これに業者が合わせて商品開発をする時代に入ってくるのだろう。藤原氏は最後に「景気が良くなっても利益は戻ってこない。みんな一緒≠ゥらそれぞれ一人一人≠フ時代になった。確実に、そういう世の中になってきた」と語った。