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デスク記事

2010/09/22

 旭川で食糧、環境に関する講演会があった。世界で約10億人が飢餓に苦しんでいるのに、食糧輸入国である日本が、日常生活の中で、いかに食糧を無駄にしているか、またエネルギーを無駄にしているか、自戒させられる内容だった▼隣で聴いていたご婦人が咳をした。肌をさすって、足を摩擦しながら「寒いですねえ」と私に言う。すると、その声を耳にした、通路をはさんで座っていた男性が「本当に、寒すぎます。何でこんなに冷房を利かす必要があるのでしょう」と眉(まゆ)を寄せる▼素晴らしい話の内容。集中して聞いていたいのに、寒さが気になって仕方がない様子だ。あちこちで鼻をすする音も聞こえ出した。ご婦人が言う。「このような講演会で、この会場の冷房の利かし方は不似合いです。冷やすなら、暑くない程度で良いのではないでしょうか」と▼クールビズとか、ノーネクタイ運動を提唱しながら、現実は矛盾が多い。各種の集会でのエアコンの利かせ方は異常だ。「寒くするのがサービス」とでも思っているのか、とにかく冷やし過ぎる。クールビズでネクタイを外しながら、寒さに耐え切れずあわてて上着を着る場面を良く目にする▼地球環境を守るため二酸化炭素の削減とか、エネルギーの節約が叫ばれ、政治課題になっているが、まだまだ意識が浸透していないように思われる。夏は冷やし過ぎて厚着をし、冬は暖め過ぎて薄着をする。こんな矛盾が繰り返される▼人は、丁度良い状態で居ることが苦手なようだ。会合での食事は必ず余る。余るくらいがサービス≠ニ思い、食べ物がテーブルからなくなると「足りなかった。失敗した」と言う。飢餓で死の瀬戸際に居る国から、食糧を輸入していることなんか、とっくに忘れている。