←前へ ↑一覧へ 次へ→

デスク記事

2010/10/31

 トロンボーンにからめたオンシジュームのヤマブキ色の花たちが、音楽の旋律のように広がってゆく。ホウズキの朱色が、昔話のように秋を演出していた。2・3本の花を小さな花器に生けた作品は、誰もが試みることが出来そうで親しみを感じさせる。市民芸術祭の展示部門が市民会館で開催されている▼文化刺繍の作品を間近で拝見すると、見事な風景が一針、一針の糸の紡(つむ)ぎで描かれていた。途方もない長い時間と、集中の力で完成させた事が分かる。絵手紙からは、全国の人たちとの温かい心の交流が伺(うかが)える。その中の文章「なにげない言葉が暗黙の底に突き落とし、ひと言がどん底から這い上がる力に…」「あたたかい言葉でお腹いっぱいにならないけれど、胸にあたたかく響き、心が満たされる」は、言葉の力を教えてくれる▼高等養護の生徒の精密な陶芸、工作には、日頃の真剣な勉強振りが現れている。特別支援学級の子供達の作品は、カップ麺、ペットボトルを巧みに使って完成させたロボットや人間の動きを表現した粘土細工など、作品に向かって真剣に立ち向かっている姿を想像させる。文連子どもクラブの生け花には、花への愛情、命を慈(いつく)しむ優しい心があふれていた▼会場の一階から三階まで、市民会館全館から伝わってくる市民芸術のメッセージは、今年のテーマ「輪〜未来へ」そのものだ。人と人のつながり、互いに理解し合い、郷土・紋別の未来を構築してゆく。そんなエネルギーが伝わってくる▼これら全ての作品に共通していることは「心を集中させて、完成させた」ということ。作者の、作品に寄せる愛情があふれ出ている。「紋別は良い所だ」と、そんな気がしてくる。この展示は31日まで。