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デスク記事

2008/08/14

 「夢と偽善」。世界の祭典・オリンピックを端的に表現すれば、こんな言葉が浮かぶ。北京五輪の開会式が行われたその日、黒海の西に位置するグルジア共和国とロシアが戦争状態に突入した。旧ソ連連邦だったグルジアは1991年に独立し、温暖な気候に恵まれた国である▼グルジアは米国寄りの政治体制を確立し、軍隊は米国製の兵器で武装している。国内にある「南オセチア自治州」がグルジアからの分離独立を希望し、これをロシアが軍事介入で後押ししている。米国が育てたグルジア軍とロシア軍の対立は、米・露の戦いの要素もある。戦いに巻き込まれるのは常に一般市民。多数の死傷者が出ているのは痛ましい限りだ▼中国では、ウイグル自治区独立運動による暴動、雲南省のバス爆破テロなど、五輪にタイミングを合わせた暴動などが各地で起きている。世界の目が集中する五輪を利用しての軍事行動、あるいは暴動による自己主張は、大きな悲しみを生み、一歩間違えば地域紛争に留まらない危険性を秘めている▼五輪はスポーツの祭典であり、政治的色彩を排除している。しかしそんな器用なことを今の世界が出来る訳もなく、政治的色彩が色濃く出るのも五輪だ。それを心で納得し、表面的には言葉で平和≠演出する。せいぜい、そんな芸当しか出来ないのが実情だ▼とは言え、自己主張が優先する人類の悲しい限界。せめて四年に一度、平和の夢を見るのが五輪でもある。それが届かなくても、届かせる願いを持ち続け、それをスポーツの祭典・五輪に託す。ある意味、はなかい夢でもある▼開会式で華々しく打ち上げられる花火。その時グルジアとロシアは砲火で一般市民を巻き添えにした。北京五輪の歓声が、束の間の花火に思えてならない。