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デスク記事

2010/12/08

 本塁打の世界記録を達成し、巨人軍の監督を4年つとめ、国民栄誉賞に輝き、そして今年の文化勲章を受けた王貞治氏。野球史に輝く人物だ。6日、その王さんの講演を聞いた。豊かな才能と身体能力に恵まれていることは勿論だが、それ以上に野球に寄せる濃密な思い≠ェ、世界の王にしたのだと感じた▼「勝ったゲームから学ぶことは何もありません。負け、痛い目にあっことから多くのことが学べます」と語る王さん。大リーグのハンクアーロンの記録を破り本塁打世界記録を作った時も「達成感はあったが、それも一息。すぐ新たな目標を定め、チャレンジしなければ次がない。記録のことは、私はあまり感じていなかった」と語った▼イチロー選手についても言及した。「10年連続200本超え安打という大リーグ記録も、彼は特別には受け止めていないでしょう」と、あくまで野球人生を続ける上での通過点だと語る。そして「それを可能にしているのは、彼の厳し過ぎる程の自己管理にあります」。世界記録を持つ王さんだからこそ言えるセリフだ▼温和な語り口調は王さんの人柄をしのばせる。70歳にして背筋のピンと伸びた若々しさ。歩き方や話すときの所作ひとつひとつが、実に切れがあり、爽やかなである。大病を克服した後も、野球に対する思いは強い。「私は野球しか出来ません。野球に携わっていられる幸せを噛みしめています」と感謝の気持ちも忘れない。最後に「人生七転び八起き。苦しい時こそ腕の見せ所。失敗しない成功はないと思っています」と締めくくった。