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デスク記事

2011/01/29

 最後に汽車に乗ったのがいつだったか、思い出せないほど鉄道のお世話にはなっていない。札幌に所用があって、いつものように車で出かけようとしたが、このところ雪のため高速道路がストップしたり、速度制限になるなど乱れがあるので久しぶりに≠ニ遠軽駅から汽車を利用した▼車窓を流れる雪景色が新鮮に目に映った。車では、そんな悠長な気持にはなれない。雪の降り方が激しくなると、視界が悪くなることを恐れ、風が強くなると吹雪を心配する。後方の車に抜かれると、雪煙りで目の前が見えなくなりブレーキをかける▼行きも帰りも、駅弁を楽しんだ。温かいお茶に色彩豊かな弁当。使い捨ての小さな入れ物に、おいしく見せるための工夫がたくさん凝(こ)らしてあった。駅弁の楽しさ、日本人の旅の文化さえ感じる▼音楽家の、故・阿久悠氏がこんなエッセイを書いていた。「今までの人生で一番の味は、終戦直後、汽車の中で食べた弁当の、キョウギのフタについたお米を、箸で一粒一粒食べたとき」と。味は、食べ物の味そのものと、その時の心の状態など、多くの要素によるのだろう▼前夜、サッカーの日韓戦が行われ、延長の末PK戦までもつれた。試合が終わった後もテレビで何回も解説、決定的瞬間などが放映された。すぐには眠れず、いつの間にか午前2時を回っていた。寝不足は、列車の心地よい揺れが解消してくれた。何の心配もなく睡眠を取れるのも、汽車ならでは。お陰で夕方からの会合にはスッキリした気分で参加することが出来た。鉄道の良さを改めて実感した。