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エジプト人は冗談好きの民族と知られている。明るく、何事にもおおらかで、物事に対してあまり深刻に受け止めない。そして日本人と決定的に違うところは、日本人は暮らしの経済を中心にして考えるが、エジプト人は家族や地域のつながりを第一と考え「幸せとは、子供を中心に家族が楽しく生活すること」だと言われている。豊かさ≠ノ対する尺度が日本人とは異なるようだ▼そんな穏やかで、多くを望まない国民性のエジプト人が、長期政権を続けるムバラク大統領の退陣を叫んで大規模な反政府デモを続けている。大統領が30年に渡り、国民に全ての面で忍耐を強い、強権を発動してきた結果が、穏やかなエジプト人の忍耐の限界を超えさせたのだろう▼「エジプトはナイルの賜(たまもの)」という、古代ギリシャの歴史家ヘロドトスの言葉は、4大文明の一つのエジプト文明を見事に象徴している。他民族の侵攻や王朝の興亡も、他の文明に比べればあまりなく、歴史の積み重ねで独特の文化を築いてきたエジプトは、豊かな砂漠の民として歴史を形成してきた▼その中東の中進国であるエジプトが、危機を迎えている。大統領の退陣まで、巨大な反政府運動は続くだろう。そして心配なのはムバラク退陣後のエジプトと、その周辺国だ。地域の大国であるエジプトの混乱は、イスラエルを始め多くの国に影響を与える。民主化を求めて、エジプトに続こうとする周辺国も出て来る懸念がある。世界経済への影響も大きい。文明発祥の地エジプトの混乱は、世界を巻き込んでゆくのだろうか。