デスク記事
冬の観光真っ盛りの時期なのに、流氷が視界から早くも消えた。風の吹きようで、一夜にして接岸することは過去にも数多くあった。今は、その時が来ることを祈りたい。青い海を航海するガリンコ号を見、関係者の心情を思うにつけ、一気に流氷が来ることを期待したい▼一般に言う「流氷の勢力」は、数十年単位で見ても、確実に衰えている。空から見ても流氷の薄さが感じられ、以前とは異なり、流氷の迫力が減少してきている。今から40年、あるいは30年前までは、紋別港内の結氷も、ダイナマイトを使っても割れなかった。流氷は防波堤を乗り越え、港内に山を作っていた▼4月になっても微動だにせず、出漁を控える漁船は「流氷退散」を祈り、時には5月になっても、オホーツク海は一面の流氷に覆われていた。流氷を避けて道南など他の港に回航していた底引き船は、春漁のため紋別に帰ってきて、まだ流氷で覆われている港に決死の突入をした年もあった▼当時は、確かに寒気が厳しかった。道を歩けばギシギシとキシミ音がして、雪の塊を蹴ると、カラカラと音を立てていた。少し内陸に入れば氷点下30度などという低温の日もあって、家庭の水道の凍結が多く、市役所の電話は鳴りっぱなしという状況だった▼過ごしやすくなったのは歓迎したいが、寒さ厳しい日が少なくなったのは、どこか淋しい。今ではオホーツクの冬を表現するとき「しばれる」という形容詞は似つかわしくない。以前と比べると、何と温暖な冬になったことか。自然は人間の注文通りには行かないが、せめて今一度流氷よ姿を見せてくれ