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デスク記事

2011/02/25

 中東には嵐が吹きまくっている。それは砂嵐ではなく、民衆による「民主化」の嵐だ。政治への不満と、これまでの国家体制への反発は、インターネットを通じて「大規模同時デモ」を可能にし、爆発的なエネルギーとなって国家の危機を引き起こしている▼豊かな石油資源のお陰で、国民の生活レベルの高い「クエート」が、独立50周年を記念して一人あたり30万円の祝い金と、食糧を1年以上にわたって無料にする政策を打ち出した。何と気前の良い、さすが金持ちの国≠ニ言えなくもないが、実のところはそうでもない▼その背景には、エジプトで起きた、長期独裁体制の大統領を暴動で引きずり降ろした民衆運動がある。エジプトの一人当たりのGDP(国内総生産)より10倍も高い、圧倒的に豊かなクエートで、それでも暴動が起きる懸念があり、国民のガス抜きが必要という▼リビアでは内乱状態に陥り、軍が国民に銃を向けている。イエメン、シリアの大統領は、次期選挙への不出馬表明、政治改革の実行を国民に約束した。ここに来て、数十年に渡る不満が一気に爆発し、巨大な民衆運動につながっている▼サウジアラビアでは、議員が選挙で選ばれる事はなく、言論の自由は厳しく制限されている。中東諸国は多かれ少なかれ、国民の意思は無視され、何かにつけて統制下にある。それが過去からの歴史の流れでもあり、国民はその流れの中に居た。しかし、民衆は自分たちの意志を通す術(すべ)を知り、歴史は音を立てて変わりつつある。日本への経済的打撃も深刻化しつつある。目が離せない状況だ。