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私の知人がこう言って、こぼしていた。「息子は大学進学を希望している。しかし授業料は高くなり、受かっても昨今の物価高で、生活費は結構な額になりそう。仕送りが大変だ」と。その息子さんは進学をあきらめた。それを受け入れざるを得なかった本人も親も、つらかっただろう▼さあ、進学を諦めたら次は就職。しかし今年は例年以上の超氷河期。希望する職種はもとより、企業の門戸も閉ざされている。高卒も大卒も、就職活動に追われっ放しだ。新たな人生をスタートさせる時期に、進むべき方向が定まらず次≠ェ見えない。学卒者にも親にも、氷河期は続く▼日本のバブル期に、友人がこんなことを言っていた。「今年大学を卒業し、東京の大手企業に採用になった娘のボーナスが、何と300万円。娘は間違いでしょ≠ニ部長さんに言ったら君が一番少ないんだ≠ニ笑われたと言う。紋別での私のボーナスは10分の1にも達しないのに」と▼また当時は、大学在学中の2、3年の頃から、すでに企業から誘いがあった。青田買い≠ニ言う言葉が流行った時代だ。恵まれていたのか、何かが狂っていたのか、それも一つの時代だった。しかし急なバブル崩壊後は、先までの高額な借金をしていたため人生を狂わせた人も多かった▼今は就職も進学も、取り巻く環境は非常に厳しいけれど、困難を克服した人には今後の人生に向かう強さが備わる。「ドンキホーテ」の著者・セルバンティスは、こんな言葉を残している。「ひとつのドアがしまったときには、また別のドアがひらくもの」。