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デスク記事

2011/03/06

 会社の私の執務室から、トナリの家の庭が見える。そこには毎日百羽ほどのスズメの集団が集まってくる。そこの家の方が心優しく冬場はエサに困るだろう≠ニ、食べ物を与えているからだ。スズメたちはこの場を他の集団に教えず、密かに秘密の食料庫としているようだ▼この集団のスズメは、他のスズメと違って栄養状態が良さそうだ。太っていて、元気が良い。決まった時間に、決まった場所に来れば食べ物には困らない。幸運にも、この集団は命をつなぐ場所を知った▼新潟地方など、多くの地域が例年にない豪雪に見舞われている。そこでは食べ物を見つけられないスズメなどの野鳥が、空腹で飛べなくなったり、餓死しているのが見つかっているそうだ。全てが深い雪の下になってしまう今年の冬は、野鳥にとっては命がけ。鳥の世界にも運、不運は付き物のようだ▼さらに不運が重なる。鳥インフルエンザが宮崎などで発生したため、元気がない鳥に対しては人間が警戒感を持つ。「弱っている鳥に不用意に近づかないように」と広報されているので、エサがなく力を失って弱っている野鳥に対しても、人間は避けて通る▼豪雪のため、全てが雪の下に覆われる今年の冬。しかもタイミング悪く鳥インフルエンザ。野鳥にとってはツキに見放された、命を脅(おびや)かされる冬になっている。雪の多い地方では、ホームセンターなどに設置されているコイン精米機の周辺に、野鳥が多く群がっているという。客がまいてくれる米を待っているためだ。私の執務室から見える元気いっぱいのスズメたちの、何と幸せなことか。