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「塔の外は恐ろしい世界。決して出てはいけないよ」と生を受けてから母親に言われ続けて18年。黄金色に輝く髪を持つ少女は、母親以外の人間に会ったことがなかった。彼女の楽しみはただ一つ。塔から遠くに見える不思議な光の正体を突き止める事だった。ある日、塔に侵入してきた泥棒・フリンにお願いして、ついに外に出ることができた。グリム童話「塔の上のラプンツェル」である▼お母さんが、あんなに恐ろしい世界≠ニ言っていた外の世界は、ラプンツェルにとって恐ろしい所ではなく、美しい自然に満ちあふれ、人々は楽しそうに通りを歩く所だった。しかしラプンツェルの美しい髪に秘密が隠されていて、やがて彼女の身に予期せぬ出来事が降りかかってくる▼18日、栃木県で登校中の小学生6人が、突然反対車線に入ってきたクレーン車にはねられ死亡した。校長先生や教師の見守る目の前での惨事だった。鉄の塊のようなクレーン車と、その下敷きになった児童。あまりにも悲しく、やるせない出来事である▼今は新学期。全国どこでも、児童の通学路にはPTAや町内会などが出て、安全を見守っている。しかしどんなに注意しても、回避が困難な事故は多々ある。今回もそうだ。この種の事故は、今後ともないとは言えない。家に閉じこもっている訳には行かないのだ▼外の世界は、子供達にとって大きく羽ばたく場であり、光り輝く夢を見ることの出来る所だ。しかし、ラプンツェルの母が言ったように、本当に恐ろしい世界でもあるのだ。その狭間で子供達は生きて、成長して行かなければならない。