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日本列島、タテに長いが横には狭い。飛行機に乗れば、それがわかる。空気が澄み、見通しの良い日に日本列島を飛ぶと、太平洋と日本海を同じ視界内に捉えられる場所がある。ダイエットが成功して細くなった腰のように、日本列島はたおやかである▼その中央を山岳地帯がタテに走り、人は、その僅かな平地にひしめき合い、まるで列島の隙間に遠慮するように、日々の生活を営んでいる。環境汚染とか、自然破壊など、人間のやっていることが批判の対象になっているが、高い空から見る人間の営みは、ひ弱に見える▼その東日本の海岸線を、海底の変動で生じた巨大な津波が襲い、そこに住む人間を、そして長い時間をかけて建設してきた道路や建物を一気にのみ込んだ。巨大なエネルギーを持つ大自然の営みに比べ、あまりにも不安定なのは人間の営みである▼地上で見る人間の姿は一見、万物を支配しているかに見える。その歴史の中で都市を建設し、色々な乗り物を誕生させ、化学の力で不可能を可能に変えて来た。時間を短縮させ、距離を埋めて来た。たいしたものだと思う。しかしそれも、地球の歴史からすれば、あまりにも瞬間的で、刹那の営みでもある▼地球の歴史は宇宙の歴史の一部。そこには長大な時間の経過と空間の深さがある。日本列島を上空から見ると、とても狭く、人間の存在感も小さい。宇宙の歴史からすれば、点にもならない人間の歴史。「原発は絶対安全」と豪語したところで、所詮(しょせん)それを作ってきたのも人間。いかなる手段を用いても、自然を越える安全性は持てない。